歴史系
自分がまだ高校生だった90年代、徳川綱吉の生類憐みの令は社会的混乱を生んだいわゆる「悪法」として認識されていたように思える。 しかし現在では、戦国の気風を残す武断政治から文治政治への転換点を象徴し、また現代的な動物愛護の観点から一種「先進的」…
ほう、18世紀パリの裁判記録か。これはおもしろいな。以前マグナ・カルタについて取り上げたことがあるが、慣習法の適用はともかくとして、この時代でも万民法としてローマ法が参照されている点などは、ヨーロッパの法体系を考えていく上で興味を持つきっか…
少し前に、南千住の回向院にある吉田松陰の墓を詣でた時に想起した話として、幕末の歴史小説がそのテロリズムの側面を覆い隠しつつ、愛国の情念を巧妙に肯定する作劇で人気を博したことに触れた(言うまでもなくそれは、敗戦で打ちのめされた人々に輝かしか…
「鶴の恩返し」や「かえるの王子様」を始めとして、異類婚姻譚というのは各地にみられるが、日本におけるそのパターンを集積し、そこからどういう世界理解(コスモロジー)が見出せるのかという分析は興味深い。 例えば、日本社会は欧米との比較において、…
「マグナ・カルタ」と言えば、1215年にイングランドはプランタジネット朝の王ジョンが、戦時における諸侯への課税などに対する貴族たちの要求を受け入れたものとして有名である。では、これをもって「マグナ・カルタの制定は、中世西欧世界においてイングラ…
はいはい、いつもの「創作系奇書解説」ですよね。でも自分は五島を旅して色々な教会を回り、潜伏キリシタンの記事も複数書いてるんで、もちろん拝見させてもらいますよ・・・っていやあこれはおもろいわ(・∀・)! 冒頭こそ、「お春」の祖国を想い憂いに沈む…
「中世ヨーロッパに初夜権は存在したか?」なるほどこれは興味深いテーマだ。というか、そこからさらに踏み込んで、「中世ヨーロッパに初夜権は存在しなかった可能性が高い→にもかかわらず、なぜその存在が信じられたのか→近代の中世観含めた政治的イデオロ…
カンボジアのトゥールスレン収容所を訪れたのは、死臭のこびりついた場所で、歴史的悲劇というものを間近に感じる機会として、得難い経験となったように思える。 ポル・ポト派の大量虐殺そのものはよく知られた話なので詳細は繰り返さないが、ともあれその…
「事実は小説よりも奇なり」という言葉を最初に聞いたのがいつのことだったか、もはや明確には覚えていないが、その時の印象としては「確かに創作の方が突拍子もない話を作ることはできるが、時には現実世界で創作よりも不可思議に思えることが生じる場合も…
例えば「ハンセン氏病は業病であり、前世の行いや遺伝により発病するのだ」という発言を聞けば、(今や発症原因や治療法も確立されているのに)驚くべき無知に基づいた有害な言説であり、かつそれを流布する忌むべき人間だと思うのではないだろうか。 では、…
おお、虎徹や村正にまつわる幻想と実態とはなかなかにおもしろいな。 まあ幻想の背景としては、歴史小説とゲームによるところが大きいだろう。つまり「沖田総司と菊一文字」などのように、刀が個人と結びつけられ特別視されることにより、そのイメージが独…
「貧困だから少子化って言われるけど、ベビーブームって終戦直後の日本が一番貧しかった時期に起きたんだが…」というサムネを見て、思わず爆笑してしまった。 これだとわかりにくいかもしれないのでもう少し単純化・一般化すると、これは「発展途上国は先進…
大名ヒエラルキーとは実によくできた支配システムですなあ(・∀・) まあこういう手法って、植民地支配における分割統治とかではよく見られるパターンだけど、強大な(外)敵がいない時はエネルギーの向かう先を横(や下)に集中させることで足の引っ張り合いを惹…
先日、織田信長の家臣団運営がブラック企業的であり、そのコミュニケーションのあり方が最終的に明智光秀の暴走を生んで本能寺の変に到った、という話を書いた。それは信長とその家臣団の政略拡大があまりに急速なものであるがゆえのキャパオーバーに本質的…
あのさあ、「忙しいからちゃんと口に出して言ってくれなきゃわかんねーっ」て言うけどさ、あんたこそ肝心なこと何も説明しようとしねーじゃんか!で、「任せたのに結果出てねーじゃねーかっ!」て後出しでネチネチ文句付けて退職に追い込むってか?おー、い…
へえ、松竹の「226」って期間限定でフル視聴できるようになってるんやな。てか「2/26まで」ならともかく、何で2/20までなんやろなあ…って突っ込みはさておき。 映画として見ると、前提をざっくり説明した後は怒涛の襲撃を描き、そこからは群像劇という展開…
諸子百家の中でも、墨家って大変興味深い思想集団の一つだよなあ。その思想の中では「非攻」や「兼愛」が特に有名だが、この辺は近代的価値観からしても注目されやすい要素だしね。また、戦国時代には大々的に活動していた集団が、秦の時代を経て突如歴史の…
前に「なぜ同じ現代日本語同士なのに話が全く通じないのか?」というお題でバイアスやスキーマに触れたが、こちらの動画では同じ言語同士ではなく、国によって教えられる「論理」の型がそもそも異なるという研究が紹介されている。 なお、ここで「論理」と…
ポリコレであれ地方創生であれ、「善意」の歴史改変の有害さを放置すれば、そう遠くない未来(すでにそうなりつつあるが)、「言ったもの勝ち」の時代が来るだろう。
「反抗的」とされたハンセン氏病患者たちを収監した重監房の復元模型の展示の先には、重監房が設置された背景が説明されていた。 1873年にはハンセン氏病の原因が明らかにされ、遺伝病ではないことが確認されたにもかかわらず、「業病」とされていた頃のよ…
草津温泉街から車を走らせること10分ほどで重監房博物館に到着。 ハンセン氏病患者の施設「栗生楽泉園」に併設されているが、こちらの役割は「反抗的」な患者や改善運動に参加した患者などを文字通り監禁した施設である(なお、ハンセン氏病患者隔離の背景や…
「歴史は勝者が作る」という言葉を聞いても、多くの人は正直あまり心に響かないのではないか。なぜなら、そういう物言いがあまりに人口に膾炙した結果、極めて陳腐化してしまったからだ。 しかし一方で、「歴史は勝者が作る」という実例を見せつけられると…
高野秀行と言えば、清水克行との共著『世界の辺境とハードボイルド室町時代』で紹介したように、世間であまり知られていない場所(ソマリアやゴールデントライアングル)を旅してその社会の有様を描写してきた作家である。 そして最新の探検(?)場所がイラク…
シェイクスピアの作品において稀代の暴君として描かれるイングランド王リチャード3世だが、その遺体が駐車場の下から見つかったことで、死亡した状況などが判明し、様々な歴史的検証が進んだ。特にDNA鑑定については、テューダー朝の正統性を揺るがす結果…
足尾銅山については、鉱毒事件という近代化・富国強兵の暗部として教わることが多い(少なくとも私はそのようにしか教わらなかった)。以前佐野を訪れた時に墓を紹介した田中正造は、そこでクローズアップされる代表的存在と言えるだろう。しかし、足尾銅山や…
「弥助」という人物が動画で取り上げられているのを見たのは二週間前くらいだったか。その時は「北野武の『首』でも登場してたヤツが侍かどうかが何で話題になってんだ?」くらいにしか思わなかった。 で、他にあれこれ忙しいのでスルーしていたが、取り上…
「逃げ上手の若君」、公開されてさっそく大変な話題となっているようで良き良き。この作品については、足利尊氏や楠木正成などではなく、北条時行という一般人からすれば「誰やねん?」という人物にスポットを当てた点が新しいが、若君の描き方やその受け入…
こないだ帰省した際に、飛行機の中で鎌倉時代の刀剣展示が行われていると知ったので、日本橋の静嘉堂文庫美術館に遠征してみた。 鎌倉時代限定ということもあり、備前長船で有名な備前派の展示が多かったが、太刀や脇差だけでなく小太刀(四乃森蒼紫!)や短…