重低音がもたらす絶望とオルゴールの美しさ・哀しさの結合は、まさしく作品の破滅的な最期を飾るに相応しい。私は今でも、精神や肉体を破壊された者たちの姿とともに、この曲を思い出す。



今さらだが、これは傑作PCゲームの一つ、「雫」のバッドエンド曲である。没入度の高い主人公主観というシステム(この場合ビジュアルノベルというのがより正確か)は、その特性から「さよならを教えて」、「ひぐらしのなく頃に」、「沙耶の唄」といった数々の傑作を生み出すことになるのだが、この作品の場合、その没入度の高さが学校という閉鎖空間での狂気を演出するのに極めて適しており、かつ学校=監獄の病理(元の発想がパノプティコンだから当たり前だが)はほとんど誰しもが経験するものであるがゆえに、今もってカルト的な人気を誇っているのだろうと思われる。



そう、このように加工した画像として提示されなくても、 なぜあの監獄の中で私たちは気が狂わないなどと思うことができたのか、とむしろ今ではその方が不思議に感ぜられるのである。